社会人・大学生のための看護系受験研究会
スコレー・アスコルー

お金の話 ~学費・生活費が気になるみなさんへ~

勉強とは別に、在学中の「お金・経済面」での不安から、受験をためらう方も大勢います。

「看護学校(看護大学)在学中にアルバイトなどで学費・生活費を稼ぎながらやっていけないだろうか?」そうお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、結論から言うと難しいと思います。というのも、看護学生の生活は、身体的、時間的にかなりハードだからです。ふだんの授業やテストもたいへんですが、実習期間ともなれば、みんな睡眠時間さえ切り詰めてがんばっているのが現状です。心身ともにきつく、時間的余裕も十分ではありません。学業と並行して一定以上の収入を得られる仕事を長期的に継続するのは非常に難しいでしょう。そもそも在学中のアルバイトを禁止にしている学校もあります。

通常の専門学校(全日制/3年)よりもカリキュラムに余裕をもたせ、看護助手の仕事と学生生活を両立できるようにしてある「昼間定時制(4年)」の学校もないわけではありません。午前中に仕事、午後に授業を受けるという生活を送るわけですが、昼間定時制の学校は全国に数校しかありません。東京近辺では、横浜市医師会聖灯看護専門学校(第二看護学科)くらいです。

働きながら学ぶという条件を何よりも優先するのなら、准看学校という選択肢も考えられるでしょう。こちらもカリキュラム上、午前中に、あるいは一日おきに病院で勤務することが可能だからです。
詳しくは、「准看護師養成校 入試の概要」をご覧ください。
 → 准看護師養成校 入試の概要

防衛医科大学校なら学費は無料(しかも給料・手当がもらえる)になりますが、年齢制限があること(自衛官コースで21歳未満、技官コースで24歳未満)や、学校のレベルの高さなどから現在社会人の方が受験するにはハードルが高いと言えるでしょう。

…というわけで、ある程度まとまった貯金があり、当面のあいだの学費・生活費には困らないという状態で入学するのがベストです。あるいは、家族が当面の学費・生活費を負担してくれるのならそれでも結構です。ただし、その場合は事前によく話し合って、確実な約束をとりつけておいてくださいね。

お金にあまり余裕がない状態ならば、「なるべく学費の安い学校を受験し、入学する」「奨学金を利用する」といった手段を考えることになります。前者の場合は、公立校・大学附属校を中心に狙うことになります。ただし、こうした学校は人気校が多く、受験倍率が高くなりがちです。後者の場合は、基本的にすべての看護学校で可能です。ただし、将来的な返済免除が設定されている奨学金の場合、「奨学金を受けたら、卒業後は指定の病院に就職する」等の条件がつけられていることがあります。


学費ってどれくらい?

学費には、(1)入学金、授業料、実習費、施設費といった学校で学ぶ権利を得るための費用、(2)教科書・テキスト代、実習着や聴診器などの費用といった学校で学ぶのに必要なものの費用、(3)その他の費用(クラス費・同窓会費、海外研修の積立金、保険費)などがあります。その他に(4)生活費・交通費等も必要です。それらをトータルで考えると、3年もしくは4年間の負担はかなりのものになります。

学費を考える上で、「初年度納入金」という指標があります。これは、明確な定義はないのですが、大学の場合は主に(1)、専門学校の場合は(1)もしくは(1)+(2)の場合が多いですね。定義が一定ではないため単純比較はできませんが、トータルの費用をイメージするための参考になります。

「初年度納入金」で学校を比較してみましょう。「初年度納入金」は一般に次のような性格があります。

・大学(4年制)よりも専門学校(3年制)の方安い。
・国公立校・大学附属校は、他の一般的な私立校よりも安い。公立の専門学校はいちばん安いグループ。
・伝統校(古くからある学校)は新設校よりも安い。
・東京都心部の学校は安く、地方に行くほど高い。

…こうしたことが言えます。以下で比較してみましょう。


<4年制の看護大学・看護学部>
◆年間授業料 国公立でも50~60万円、私立なら多くは100万円以上かかります。

◆入学金 平均して25~50万円ほど。国公立大学は、地域に居住しているかどうかで額がかわることがありますが、基本は28万2千円(2019年度)。私立大学は、40〜50万円ほどに設定しているところが多いですね。国立大学の「初年度納入金」は、私立の専門学校の大半より安くなります。

なお、大学にせよ専門学校にせよ、いったん手続をしたあとに入学を辞退した場合、「授業料」などは返還されますが、「入学金」は返してもらえません。頭に入れておいてくださいね。


<3年制の看護学校>
◆年間授業料 学校によってピンキリですが、中でも公立(都立・県立・市立)の学校の授業料は非常に安いですね。たとえば首都圏であれば、東京都立看護専門学校では年額約27万円。埼玉県立高等看護学院は約17万円、千葉県立看護専門学校は約12万円です。中部東海地区の公立校にも、10万円ほど(月1万円ほど)という学校がいくつもあります。

全国展開している学校であれば、赤十字系の学校は50万円、労災系の学校は約34万円、済生会系の学校は30〜40万円と授業料は低めに設定されています。大学附属系の専門学校もだいたい30〜40万円台でしょう。国立病院機構系の学校はかつては非常に安かったのですが、独立行政法人化を機に授業料が徐々に値上げされ、現在では40〜50万円ほどになっています。一方、私立の学校の場合、授業料が100万円を超える学校は少なくありません。(新設校ほど学費は高く設定される傾向にあります。)

◆入学金 平均して10~20万円ほど(あるいはそれ以上)かかると思ってよいでしょう。東京都立看護専門学校の入学金は約11000円です。市立の看護学校なら入学金が無料というところもあります。都立看護専門学校や一部の市立の看護専門学校ほど入学金が安い例はまれですが、公立校は比較的入学金は低めに設定されています。


なお、入学金・授業料の他にも教材費・教科書代をはじめとして、白衣・実習着・制服代、積立金(海外実習のための積立など)、クラス費、保険費、同窓会費、などさまざまな費用がかかります。私立の学校なら寄付金が必要なこともあります。「初年度納入金」と実際にかかる金額には少なからぬ差があります。この点には注意が必要です。

まとめると、平均的な学校であれば、100万円超という金額になります。いちばん安い学校でも50万円以上になるでしょう。

これらを一括納入しなくてはならない入学時の負担は、非常に大きくなります。ただし、合格直後の入学手続き時に1年分を全納するという学校は多くありません。一般的な学校は、入学手続き時には入学金と年間の学費の半分(前期の学費分)を納入し、その後は何かあるごとにちょびちょび学校に支払うということが多いでしょう。


【首都圏の看護専門学校の「初年度納入金」の比較(2018年度)】
首都圏の看護専門学校の「初年度納入金」を下にまとめました。学校によっては、この他に教科書・模試その他の教材費、白衣・実習着などの被服費、保険や同窓会などの費用、各種積立金などが必要になります。(教科書代は「初年度納入金」に含まれている場合もあります。)

この金額に学校や実習先への交通費や日々の生活費を加え、奨学金を引いたものが入学1年目に必要な費用となります。学校に支払う分だけを考えるなら、下の表の金額に30〜40万円ほど上乗せして考えるとよいでしょう。

また、教科書代などは、3年分をまとめて最初に払う場合と、学年ごとに別々に払う場合がありますが、多くの場合、年度ごとに必要な分だけ納入することになります。1年次がいちばん座学が多いため、必要な金額も大きくなります。さらに、2年目以降は入学金など一部の費用が不要になるので、1年目より費用負担は軽くなります。基本的には、一般に1年目、特に入学時の負担が一番大きくなります。

なお、費用の詳細については、各学校の受験要項などで必ず確認してください。

◎東京都

0〜30万円 7校 東京都立看護専門学校
30〜50万円 4校 慈恵看護専門学校,慈恵第三看護専門学校,昭和大学医学部附属看護専門学校,JR東京総合病院高等看護学園
50〜75万円 5校 東京女子医科大学看護専門学校,八王子市立看護専門学校,日本大学医学部附属看護専門学校,(独)JCHO東京新宿メディカルセンター附属看護専門学校
75〜100万円 5校 (独)JCHO東京山手メディカルセンター附属看護専門学校,板橋中央看護専門学校,至誠会看護専門学校,帝京高等看護学院,江戸川看護専門学校
100〜150万円 6校 聖和看護専門学校,東京墨田看護専門学校,早稲田速記医療福祉専門学校,博慈会高等看護学院,西新井看護専門学校,東京警察病院看護専門学校
150〜200万円 3校 首都医校(高度専門士看護学科),首都医校(実践看護学科Ⅰ),首都医校(実践看護学科Ⅱ)

※学科が異なる場合は、それぞれを1校として計算しています。

7校ある東京都立看護専門学校が圧倒的に安いですが、慈恵看護専門学校や東京女子医科大学看護専門学校、JCHOの2校など「初年度納入金」が低めに設定されている学校が多数あります。都内の専門学校の半数以上が、「初年度納入金」が100万円以下に収まっています。平均を取れば、おそらく、全国で最も安い費用で看護師の資格を取れるのが東京都です。


◎神奈川県

0〜30万円 0校
30〜50万円 4校 神奈川県立よこはま看護専門学校,神奈川県立平塚看護大学校,藤沢市立看護専門学校,聖マリアンナ医科大学看護専門学校
50〜75万円 7校 神奈川県立衛生看護専門学校,横須賀市立看護専門学校,厚木看護専門学校,横浜市医師会聖灯看護専門学校(第二看護学科),横浜市医師会聖灯看護専門学校(第一看護学科),相模原看護専門学校,(独)国立病院機構横浜医療センター附属横浜看護学校
75〜100万円 8校 おだわら看護専門学校,小澤高等看護学院,積善会看護専門学校,(独)地域医療機能推進機構横浜中央病院附属看護専門学校,横浜市病院協会看護専門学校,湘南看護専門学校,茅ヶ崎看護専門学校,湘南平塚看護専門学校
100〜150万円 6校 横浜未来看護専門学校,イムス横浜国際看護専門学校,たまプラーザ看護学校,神奈川衛生学園専門学校,横浜実践看護専門学校,横浜中央看護専門学校
150〜200万円 0校

神奈川県も東京都と似たタイプです。「初年度納入金」が100万円以下の学校が、全体の8割近くを占めています。また、新設校ほど値段が高くなる傾向にあります。


◎埼玉県

0〜30万円 1校 埼玉県立高等看護学院
30〜50万円 2校 さいたま市立高等看護学院(市内),春日部市立看護専門学校
50〜75万円 4校 さいたま市立高等看護学院(市外),獨協医科大学附属看護専門学校三郷校,(独)国立病院機構 西埼玉中央病院附属看護学校,川口市立看護専門学校
75〜100万円 3校 蕨戸田市医師会看護専門学校,秩父看護専門学校,埼玉医療福祉会看護専門学校
100〜150万円 14校 済生会川口看護専門学校,上尾中央看護専門学校,さいたま看護専門学校,本庄児玉看護専門学校,埼玉医科大学附属総合医療センター看護専門学校,戸田中央看護専門学校,久喜看護専門学校,上尾市医師会上尾看護専門学校,深谷大里看護専門学校,幸手看護専門学校,坂戸鶴ヶ島医師会立看護専門学校,北里大学看護専門学校,専門学校日本医科学大学校,浦和学院専門学校
150〜200万円 0校

埼玉県は、圧倒的に安い公立校と、100万円超の私立校に二分されています。ただし、公立校の金額には、諸経費が含まれていないため、実際にはもう少し差は縮まります。


◎千葉県

0〜30万円 2 千葉県立野田看護専門学校,旭中央病院附属看護専門学校
30〜50万円 3 千葉県立鶴舞看護専門学校,君津中央病院附属看護学校,日本医科大学看護専門学校
50〜75万円 7 松戸市立総合医療センター附属看護専門学校,(独)国立病院機構千葉医療センター附属千葉看護学校,千葉中央看護専門学校,船橋市立看護専門学校,安房医療福祉専門学校,慈恵柏看護専門学校,千葉市青葉看護専門学校
75〜100万円 4 亀田医療技術専門学校,(独)労働者健康安全機構 千葉労災看護専門学校,勤医会東葛看護専門学校,山王看護専門学校
100〜150万円 1 葵会柏看護専門学校
150〜200万円 0

千葉県は、東京都に近いタイプです。公立校を中心に、「初年度納入金」が低めの学校が多数あります。諸経費を含めてもかなり安く抑えることができますね。


奨学金制度とは?

奨学金制度はだいたい以下の4系統に整理することができます。

★「日本学生支援機構」の奨学金

「奨学金」と言えば、まず思い浮かぶのは「日本学生支援機構」(旧・日本育英会)の奨学金でしょう。利用者が多く、大学時代にお世話になった社会人の方もいるかもしれませんね。また、給付型の奨学金(返済義務のない奨学金)の制度も始まっています。

日本学生支援機構の奨学金の概要は、以下の通りです。

◎一種奨学金(無利子)
<貸与月額>
国公立大学 自宅通学 20,000円/30,000円/45,000円
国公立大学 自宅外通学 20,000円/30,000円/40,000円/51,000円
私立大学 自宅通学 20,000円/30,000円/40,000円/54,000円
私立大学 自宅外通学 20,000円/30,000円/40,000円/50,000円/64,000円

国公立短大・専門 自宅通学 20,000円/30,000円/45,000円
国公立短大・専門 自宅外通学 20,000円/30,000円/40,000円/51,000円
私立短大・専門 自宅通学 20,000円/30,000円/40,000円/53,000円
私立短大・専門 自宅外通学 20,000円/30,000円/40,000円/50,000円/60,000円


◎第二種奨学金(有利子)
<貸与月額>
2〜12万円までの間で選択

◎学力基準と家計基準がある。なお、第一種奨学金のほうは成績などの条件が非常に厳しい。(大学:高校2〜3年の評定平均3.5以上+世帯収入742/801万円以下、専門:高校2〜3年の評定平均3.2以上+世帯収入686/780万円以下(2019年度))
◎学校ごとに利用者の定員が決められている。現役生を優先する学校も多い。
◎社会人の方の場合、貸与の申込は進学した学校(看護学校・看護大学)を通じて行う。
◎奨学金の貸与を受けるには、従来「連帯保証人」「保証人」を立てる必要がありましたが、いまは保証人を要しない「機関保証」(保証料を天引きで支払う)での申込みも可能になっている。


◎給付型奨学金
対象者:住民税非課税世帯、生活保護受給世帯、社会的養護を必要とする人
<支給月額>
国立大学・短大・専門 自宅通学 2万円(0円)※
国立大学・短大・専門 自宅外通学 3万円(2万円)※
公立大学・短大・専門 自宅通学  2万円
公立大学・短大・専門 自宅通学  3万円
私立大学・短大・専門 自宅通学 3万円
私立大学・短大・専門 自宅通学 4万円
※国立の学校で、授業料が全額免除となる場合は、カッコ内の金額に減額。

詳しくは「日本学生支援機構」などをご覧ください。
 → 日本学生支援機構
 → 日本学生支援機構 奨学金のページ


★都道府県や自治体の奨学金

都道府県や市町村が看護師の養成校で学ぶ人などを対象に行っている奨学金制度があります。基本的に、返済義務のある奨学金ですが、奨学金の貸与を受けた都道府県や市町村の病院等の指定の施設に一定期間勤務すれば、返済が免除になるものが大半です。

以下に自治体の奨学金の例を挙げます。

◎東京都の看護学生向け奨学金(東京都看護師等修学資金)
第一種貸与(1口のみ)
<貸与月額>
国公立大学・短大・専門学校 月額32,000円
私立大学・短大・専門学校 月額36,000円
准看護師 月額21,000円
免許取得後、都の指定する施設(200床未満の病院・施設または精神病院等)に5年以上勤務すれば返還免除。

第二種貸与(2口まで申し込み可)
<貸与月額>
対象となる全ての課程・設置主体 月額25,000円
返済免除の規定はなく、将来必ず返還する。

 → 東京都の看護師等修学資金貸与事業へのリンク


◎神奈川県の看護学生向け奨学金(神奈川県看護師等修学資金)
<貸与月額>
公立校 一般修学資金 17,000円
公立校 特別修学資金 40,000円
私立校 一般修学資金 20,000円
私立校 特別修学資金 20,000円
※一般修学資金:県内の養成施設に在学+成績・性行良好・健康+卒業後に県内において看護職として従事
 特別修学資金:上記+住民税非課税世帯または均等割のみ世帯
※神奈川県内の病院等に5年勤務/神奈川県内の200床未満の病院または精神病院等に3年勤務で返済免除

 → 修学資金がサポート(神奈川県看護師等修学資金(貸与))


都道府県によって貸与定員や貸与額、返還免除規定などの内容は異なりますが、だいたいどの都道府県でも月3〜4万円程度の金額が貸与されます。関心のある方は、お住いの都道府県・市町村の役所のホームページで調べてみましょう。ただし、近年は財政事情の悪化などの影響で廃止の流れも強まりつつあります。過度な期待はできないでしょう。


★学校の奨学金

学校が独自に設けている奨学金制度(いろいろだが、月額3万円くらいのケースが多い)。よくあるのは、免許取得後、その系列・グループの病院に一定期間勤務すれば返済を免除するというしくみのもの。詳細は学校のウェブサイトなどで調べてください。学校・病院にとっては奨学金を出すことで将来の働き手を確保するねらいがあるので、入学者は強制的に全員が受給する、希望すればほぼ確実に貸与してもらえる…という学校も多いです。(もちろん、現役生に優先して支給し、社会人には厳しめという学校もあります。)


★病院の奨学金

在学校を問わず、病院が奨学金を貸与してくれるという制度もあります。将来その病院に一定の期間勤務することで返済が免除されるしくみです。このタイプの奨学金には次のようなパターンがあります。

①大学病院・医療法人が併設校として看護大学・看護専門学校等を設置し、将来同法人に就職することを条件に、併設校の学生に奨学金を貸与するケース。
②併設校を持っている大学病院・医療法人が、併設校以外の看護学校の学生に奨学金を貸与するケース。
③学校を持っていない一般の医療法人が独自の奨学金を設定し、いくつもの看護学校の学生に奨学金を貸与するケース。

このうち、①は上の「学校の奨学金」の仕組みです。ここでの「病院の奨学金」には、②③のパターンが当てはまります。このタイプの奨学金はなかなか個人では調べにくいので、関心がある方はまず進学先の学校で相談してみましょう。事務がきちんとしている看護学校なら、事務室(就職課等)に行けば、全国の病院からの奨学金のリストが置いてありますよ。

②③のタイプの奨学金は、入学してから受け取るかどうか検討するケースが一般的でしょう。たとえば、「看護専門学校に在籍中にインターンに行った病院の雰囲気がよかったから、将来就職するつもりでその病院の奨学金を申請する」ような場合です。2年次、3年次になってから、短い期間でも貸与を受けることもできます。


◇◇◇


奨学金を検討する上でひとつ、気をつけなくてはならないのは、すでに述べた通り、入学手続き時の負担がいちばん大きい(まとまった額の支払いが必要になる)ということです。社会人(や元社会人の方)が奨学金を受ける場合には、進学後に学校を通じて申し込むことになり、貸与開始時期はどうしても遅れがちになります。入学前にまとまったお金を用意したい場合は、日本政策金融公庫が行っている「国の教育ローン(教育一般貸付)」の利用なども考えられます。

ただし、「国の教育ローン」は原則的には学生の保護者が借りるものです。本人が申し込むこともできますが、その場合、ハードルはかなり高くなります。「現在定職についていて、勤続年数もそれなりにある人」でないと、そもそも審査対象にならないでしょう。詳しくは日本政策金融公庫に問い合わせてみてください。

 → 日本政策金融公庫
 → 動画「5分でわかる国の教育ローン」

◎日本政策金融公庫 国の教育ローン(教育一般貸付)
・「借入金」であって、「奨学金」でも「給付金」でもない。
  → 必ず返済しなければならない。
  → (「奨学金」でないため)日本学生支援機構の奨学金と併用できる。
・融資額 最高350万円まで。金利は年1.71%、返済期間は最長15年
・入学前でも利用できる。最短で20日程度で入金。
  → 入学手続き時のまとまった金額の支払いに利用できる。
・使いみち
 学校納付金(入学金、授業料、施設設備費など)
 受験にかかった費用(受験料、受験時の交通費・宿泊費など)
 在学のため必要となる住居費用(アパート・マンションの敷金・家賃など)
 教科書代、教材費、パソコン購入費、通学費用、修学旅行費用、学生の国民年金保険料など


奨学金・教育ローンは重複して受けることもできるので、うまく組み合わせれば学費・生活費のかなりの部分をまかなうことも可能です。ただし、奨学金を貸与されるには、所定の条件を満たしたうえで奨学生に採用されなくてはなりません。申し込めば「必ず受けられる」保証はない点は、注意が必要です。(奨学金の種類によっても異なりますが…。)

「奨学金」という名称ですが、はっきり言えば「借金」(ほとんどの場合)ですよね。もし、学業を続けられなくなってしまった場合、看護師国家試験を受験できなかった場合も、それまでに貸与された奨学金は当然、返さなくてはなりません。(滞納者への対応は、近年は厳しくなってきています。)しかも、奨学金によっては、コースアウトした時点(看護学校を中退した場合や、卒業後返還義務が免除になる前に病院を退職した場合など)で容赦なく「一括返済」が求められるものも多いので注意が必要です。そうしたこともきちんと考慮したうえで検討しましょう。


専門実践教育訓練給付金(専門実践教育訓練給付金、教育訓練支援給付金)

社会人で、会社を退職して看護学校を目指す方の場合、「教育訓練給付金」を受けることで、学費負担を和らげることが可能です。これは、もともとは失業時にハローワークで指定の学校で就業に向けた勉強をするとその学費の一部を負担してもらえるという仕組みです。それが拡張され、2014年10月から看護専門学校に適用されることになったものです。

 → (厚生労働省)教育訓練給付制度
 → (ハローワーク)教育訓練給付制度


◎専門実践教育訓練給付金
給付額は、訓練費用(学費)の50%で最大で1年間40万円。訓練終了後すぐに就職する場合、訓練費用(学費)の20%の追加給付を受けることができます。給付と追加給付を合わせると、最大で3年間で168万円の支給が受けられることになります。

支給額は学費に対する割合ですから、学校によって変わります。学費が高い方が支給額は多くなり、学費が年間80万円のときに支給額は最大となります。この場合、3年間の支給額は最大の168万円となります。(学費が80万円以上の学校では支給額は168万円、80万円に満たない場合は学費の70%が支給額となります。)

専門実践教育訓練給付金の支給を受けることのできる条件は、以下の通りです。

1.雇用保険の被保険者(=在職者)
 専門実践教育訓練の受講を開始した日に、雇用保険の被保険者である方のうち、支給要件期間が3年(初めて教育訓練給付金を受給する場合は2年)以上ある方
 (雇用保険のある会社で会社員として3年または2年以上働いており、かつ在職中の人)

2.雇用保険の被保険者であった方(=離職者)
 受講を開始した日に一般被保険者でなく(すでに退職しているということ)、一般被保険者資格を喪失した日(退職した日の翌日)から受講開始日までが1年以内 かつ 雇用保険の加入期間(支給要件期間)が3年(初めて教育訓練給付金を受給する場合は2年)以上ある方

3.入学する学校が、「専門実践教育訓練」の指定講座であること。つまり、厚生労働大臣の指定の受けている学校でないと給付を受けることはできません。厚生労働大臣の指定を受けている学校なら、学校のパンフレットやホームページに「専門実践教育訓練指定講座」のような記述があります。探してみましょう。

なお、専門実践教育訓練給付金の手続きは、ハローワークで行います。詳細は管轄のハローワークで確認してください。手続きを進めるだけでなく、自分が受給要件を満たしているか確認することもできますよ。


◎教育訓練支援給付金
上の専門実践教育訓練の対象者で実際に指定講座を受講している人で、一定の条件を満たした人には、さらに追加で教育訓練支援給付金が支給されます。
※令和4年3月31日までの時限措置となります。

教育訓練支援給付金の受給資格は以下のようなものです。
・専門実践教育訓練給付金を受給する資格がある。
・一般被保険者でなくなって(離職日の翌日)から1年以内に専門実践教育訓練を開始する。
・専門実践教育訓練を修了する見込みがある。
・専門実践教育訓練の受講開始時に45歳未満であること。
・教育訓練支援給付金の受給資格確認時において一般被保険者ではないこと(離職していること)。また、一般被保険者ではなくなった後、短期雇用特例被保険者または日雇労働被保険者になっていないこと。
・会社などの役員に就任していないこと(活動や報酬がない場合はハローワークでご確認ください)。
・自治体の長に就任していないこと。
・今回の専門実践教育訓練の受講開始日前に教育訓練支援給付金を受けたことがないこと。
・教育訓練給付金を受けたことがないこと。
・専門実践教育訓練の受講開始日が令和4年3月31日以前であること。


退職したばかりの人は、まずはハローワークで失業保険の手続きを行うと思います。その失業保険が切れた後、学校を卒業するまで引き続き失業保険を受けられるようにする制度が、この教育訓練支援給付金であると考えると、イメージをつかみやすいかもしれません。

専門実践教育訓練給付金や教育訓練支援給付金は給付金ですから、奨学金とは違って返済義務はありません。条件が合えばどんどん利用したいものですね。

「専門実践教育訓練」に今年度指定されている看護学校(平成31年度4月開講講座)のリストを、ブログに掲載しています。よろしければ、ご確認ください。

専門実践教育訓練給付金の指定を受けている看護学校のリスト(2019年4月開講)


寮のある学校は?

看護専門学校志望者のみなさんの中には「寮に入る」ことを検討されている方もいらっしゃるかもしれません。寮費(食費や水光熱費は除く)は月額2~3万円程度という場合が多く、敷金・礼金なども不要なので、入寮すればたしかに住居費・生活費を抑えることができます。しかし、部屋数が限られている以上、確実に入寮できるという保証はないので、その点は注意が必要です。(なお、入寮できるのは「女子のみ」としている学校が多い。)

参考までに、以下に東京近辺で学生寮(寄宿寮)のある看護専門学校の例を挙げておきましょう(2019年3月現在)。詳細は各校のウェブページなどで確認してください。

<学生寮のある関東の看護専門学校>
◎東京都
東京墨田看護専門学校
昭和大学医学部附属看護専門学校
東京都立荏原看護専門学校(南多摩に隣接)
東京都立広尾看護専門学校(南多摩に隣接)
JR東京総合病院高等看護学園(女子のみ)
至誠会看護専門学校
独立行政法人地域医療機能推進機構東京新宿メディカルセンター附属看護専門学校(女子のみ)
独立行政法人地域医療機能推進機構東京山手メディカルセンター附属看護専門学校(女子のみ)
早稲田速記医療福祉専門学校
東京都立板橋看護専門学校(南多摩に隣接)
日本大学医学部附属看護専門学校(女子のみ)
帝京高等看護学院(女子のみ)
板橋中央看護専門学校
東京都立府中看護専門学校(南多摩に隣接)
東京都立青梅看護専門学校(南多摩に隣接)
東京都立南多摩看護専門学校
東京都立北多摩看護専門学校(南多摩に隣接)

◎神奈川県
聖マリアンナ医科大学看護専門学校 横浜実践看護専門学校(女子のみ) 独立行政法人労働者健康安全機構横浜労災看護専門学校 独立行政法人地域医療機能推進機構横浜中央病院附属看護専門学校 茅ヶ崎看護専門学校(女子のみ) ◎埼玉県 川口市立看護専門学校(女子のみ)
戸田中央看護専門学校(女子のみ)
さいたま市立高等看護学院(女子のみ)
さいたま看護専門学校
学校法人明星学園浦和学院専門学校(女子のみ)
学校法人村上学園 専門学校日本医科学大学校
埼玉医療福祉会看護専門学校(女子のみ)
埼玉医科大学附属総合医療センター看護専門学校(女子のみ)
独立行政法人国立病院機構西埼玉中央病院附属看護学校(2室)
埼玉県立高等看護学院(女子のみ)
上尾中央看護専門学校(女子のみ)
北里大学看護専門学校

◎千葉県
日本医科大学看護専門学校(女子のみ)
千葉県立野田看護専門学校
地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院旭中央病院附属看護専門学校
千葉県立鶴舞看護専門学校
君津中央病院附属看護学校
安房医療福祉専門学校
亀田医療技術専門学校

◎茨城県
東京医科大学霞ヶ浦看護専門学校(女子のみ)
茨城県立つくば看護専門学校(女子のみ)
晃陽看護栄養専門学校
茨城県立中央看護専門学校(女子のみ)

◎栃木県
独立行政法人国立病院機構栃木医療センター附属看護学校(女子のみ)
獨協医科大学附属看護専門学校
国際医療福祉大学塩谷看護専門学校


◇◇◇


シングルマザー/シングルファザー(母子家庭の母親、父子家庭の父親)の場合は、「高等職業訓練促進給付金等事業」を利用するという方法もあります。

これは、母子家庭の母親が看護学校などに通う場合、生活の負担を軽くするために自治体から援助してもらえるという制度です。該当する方はぜひ調べて、お住まいの市区町村の役所で相談してみてください。(ただ、お子さんがまだ小さい場合には、育児と学業の両立は厳しくなります。強い覚悟と周囲のサポートが必要となりますよ。)

 → (厚生労働省)母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について

◎高等職業訓練促進給付金等事業
(1)概要
母子家庭の母又は父子家庭の父が看護師や介護福祉士等の資格取得のため、1年以上養成機関で修業する場合に、修業期間中の生活の負担軽減のために、高等職業訓練促進給付金が支給されるとともに、入学時の負担軽減のため、高等職業訓練修了支援給付金が支給されます。

(2)対象者
母子家庭の母又は父子家庭の父であって、現に児童(20歳に満たない者)を扶養し、以下の要件を全て満たす方
・児童扶養手当の支給を受けているか又は同等の所得水準にあること
・養成機関において1年以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得が見込まれること
・仕事または育児と修業の両立が困難であること※平成25年度入学者から父子家庭も対象

(3)支給額・期間
○高等職業訓練促進給付金
支給額
 月額100,000円 (市町村民税非課税世帯)
 月額 70,500円(市町村民税課税世帯)
支給期間
 修業期間の全期間(上限3年)

○高等職業訓練修了支援給付金
支給額
 50,000円(市町村民税非課税世帯)
 25,000円(市町村民税課税世帯)
支給期間
 修了後に支給
(4)対象となる資格
看護師、介護福祉士、保育士、歯科衛生士、理学療法士等


以上を参考にしていただいて、入学後3年間(または4年間)の資金計画・見通しを立ててください。

最後にひとこと。「お金」だけの問題なら、知恵を絞ればどうにか解決の手立ては見つけられる気がします。学業が続けられなくなってしまう人たちの多くが抱えているのは、実は「家族」の問題なのです。たとえば、介護や育児を中心的に担う立場での通学は非常に困難、端的に言えば不可能でしょう。小さいお子さまがいる方や、介護を要するご家族がいる方は、当面(少なくとも在学中の期間)の介護や育児の負担について、当事者間で徹底的に話しあうことから始めてくださいね!



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