社会人・大学生のための看護系受験研究会
スコレー・アスコルー

看護系入試マニュアル

看護系入試マニュアル 【最初に考えるべきこと】

看護の学校を受験したいと考えていても、入試の実情・準備の仕方がいまひとつわからず、ためらっている人もかなりいるようですね。ここでは、最初に考えなくてはならないポイントを4点挙げておきます。


①目指す学校の種類:大学? 専門学校? それとも…

看護師国家試験を受けるには、高校を卒業後(または高卒認定を取得後)、大学【4年制】または短期大学・専門学校【いずれも3年制】に入学して所定の単位を取得しなくてはなりません。したがって、「大学で4年間学ぶか、専門学校(あるいは短大)で3年間学ぶか」をまず選ぶことになるでしょう。
(ちなみに、大卒(学士)と同等の高度専門士の資格を取得できる専門学校【4年制】や、定時制の専門学校【4年制】、保健師と看護師の国家試験受験資格を同時に取得できる専門学校【4年制】も少数ながら存在します。)


大学・専門学校それぞれのメリットをおおざっぱに挙げてみましょう。

◎専門学校のメリット
・より早く国家資格を取得し、より早く医療の現場に立つことができる。
(学生の間は、仕事による収入がなくなります。その無収入の期間を1年短縮できるメリットは大きいと言えます。また、現場希望の強い方だと、1年早く現場に立てるということも大きなメリットとなります。)

・大学に比べれば、学費がかなり安くすむケースが多い。
(私立大学の場合、学費だけで1年間に約200万円かかります。専門学校なら、新設校で100万円程度、歴史のある学校なら100万円未満に収まるケースは少なくありません。最も安い部類の専門学校と最も高い部類の私立大学を比べると、学費だけで、7、8倍の差がつきます。)

・進学すれば就職先もほぼ決まるタイプの学校も多く、将来の見通しがたてやすい。
(ただし、就職先を自由に選びたい方にとってはデメリットになる可能性があります。また、病院の新卒採用に年齢制限がある場合は、学校受験に年齢制限がかかる可能性もあります。)


◎大学のメリット
・大卒の肩書を得られる。
(今は大学進学があたり前という時代で、学歴コンプレックスを持たずにすみます。また、大病院への就職先を希望する場合には、有利に働くことが多いです。)

・保健師や助産師など、看護師以外の国家試験の受験資格も得られる。
(一部の専門学校でも得ることができます。)

・「職業/技能訓練校」的な雰囲気の強い専門学校に比べ、自分なりのテーマを深めるような勉強もできる。卒業後の大学院進学なども考えやすい。


なお、事情によっては看護師ではなく准看護師の養成校(2年制)という選択肢も考えられるでしょう。准看養成校の受験については、「准看護師養成校 入試の概要」をご覧ください。
 → 准看護師養成校 入試の概要



②社会人入試か? 一般入試か?

1990年代後半から社会人・大学生などを対象とする特別枠の入試を導入する学校が増えました。現在では毎年夏~初冬にかけて、多くの学校が「社会人入試」(あるいは大学卒業者を対象とする「学士入試」)を実施しています。試験の内容は学校によって異なりますが、「小論文+面接」「国語+面接」などのケースが多いですね。

また、12月~3月にかけては、学科試験を中心とする「一般入試」が行われます。入試科目の組合せはさまざまですが、主流は国語+英語+数学(あるいは国語+英語+理科(生物))の3教科です。

さて、社会人入試、一般入試のどちらをメインに狙うか。そこはじっくり検討すべき問題です。いくつかのパターンを考えてみましょう。


・学科の勉強をする時間的余裕が確保できないので、小論文や国語だけで受験可能な社会人入試をメインに狙って受験するつもり……

勉強から長期間離れている社会人ではこうした方は結構います。ただし、学科の負担が少なくてすむ社会人入試は厳しい競争になりがちです。学校によっては倍率が10倍を超えることもあります。(参考:一般入試の倍率は2倍程度)そのため、社会人入試での合格を目指していても、いざとなれば一般入試でも受験できるよう、国・英・数の主要教科の勉強も並行して進める人が多いようです。


その一方、

・自分は小論文や面接よりも学科試験のほうが得意なので、一般入試をメインに受験するつもり……

こういうタイプの人も実は意外にたくさんいます。社会人の方で、一流大学を一般入試で合格してきた方など、学力には一定の自信がある方には、看護学校の入試の問題は、基礎レベルの取り組みやすいものだからです。
この作戦も十分にありえますが、一般入試でも大半の学校で課せられる面接試験にぶっつけ本番で臨むことへのリスクを考慮する必要があります。「試験に慣れる」という意味でも、早い時期に社会人入試など特別枠の入試も1つ(や2つ)受験してみてもいいかもしれません。
面接試験には、「習うより慣れろ」「度胸と笑顔」という面があります。例えば、自分は第一志望の学校が最初の面接だけど、ライバルはその学校が3校目の面接となるケースも起こりえます。「慣れ」は面接本番での落ち着きに差がもたらします。



③勉強する教科を決める

社会人入試をねらうなら、小論文・作文を書く練習をなるべく早くから始めるべきです。試験の時期は秋~冬なので、それまでに満足した小論文・作文が書けるよう、スタートは早めに! (ただし、小論文以外のテストを実施している学校も意外にありますから、注意してください。)

一般入試を想定するのなら、学習する教科の組合せをじっくり検討しましょう。東京近辺の専門学校では国語+数学+英語3教科型入試が多いです。一方、大学(私立大学)ならば多くの場合、数学と理科(生物)を選択できます。

数学を勉強するとしたら、「数学Ⅰ」だけでなく「数学A」範囲までしっかりやるかのどうかも考えておきましょう。(大学志望であれば、「数学Ⅰ」「数学A」の両方を学習する必要がありますが、専門学校なら「数学Ⅰ」だけで受験できる学校も意外に多いのです。)

理科(生物)では、受験科目が、「生物基礎」のみのところ、「生物」のみのところ、「生物基礎+生物」のところと、3パターンあります。ただし、実際の問題を見てみると、試験科目名が「生物」となっていながら、実際には「生物基礎」の範囲からの出題という学校は珍しくありません。理科(生物)を勉強される方は、「生物基礎」を中心に勉強しつつも、「生物」の範囲までひと通り勉強しておきたいですね。

国語と英語は、高校までの勉強の仕方と大きく変わりません。それでも、文章の読解がメインの学校(東京都立看護専門学校、国立病院機構系の学校など)、知識系問題の出題が目立つ学校(昭和大学医学部附属看護専門学校など)、学校ごとに入試問題の特色がありますから、力を入れる箇所は、学校ごとに多少異なります。その点は注意が必要です。

理数系の科目で注意したい点は、2015年度の新課程入試への切り替えにより、教科の内容が変わったことです。数学Ⅰでは「データの分析」分野の出題が新たに加わりました。統計分野の基礎であり、旧課程で学んできた人にはなじみの薄い科目です。偏差値の求め方や箱ひげ図の読み方といった基本的なことがらについては、「新課程」対応の数学ⅠAの教科書や参考書で勉強しておく必要があります。
生物では、旧課程の生物Ⅰの内容の多くは新課程の生物に移りました。むしろ旧課程の生物Ⅱから新課程の生物基礎に移ったものが目立ちます。旧課程で生物Ⅰまでしかほとんど勉強してこなかった方は、新課程の生物基礎をていねいに勉強してください。
例えば、旧課程の生物Ⅰでは必須単元だった遺伝(メンデルの法則など)は、生物基礎では取り上げられていません。実際に入試問題で目にする機会も減りました。新課程の生物基礎で注意して勉強したいのは細胞のしくみ、代謝のしくみ、免疫のしくみなどです。これらはそのまま進学後の勉強に活かすことができます。

現在高校生という方は、お使いの教科書や参考書をそのまま用いて構いません。現在社会人で旧課程で勉強してきた方は、「新課程」という表記のある参考書や問題集を買い直すとよいでしょう。


参考<専門学校での数学の出題範囲:2020年度入試>
*「数学Ⅰ」のみ
東京都立看護専門学校(7校)
国立病院機構系(横浜医療センター、西埼玉病院、千葉医療センターなど)
慈恵看護専門学校
JCHO東京山手メディカルセンター附属看護専門学校
東京女子医科大学看護専門学校
日本大学医学部附属看護専門学校
聖和看護専門学校
八王子市立看護専門学校
慈恵第三看護専門学校
横浜市医師会聖灯看護専門学校(第一・二看護学科)
JCHO横浜中央病院附属看護専門学校
横浜実践看護専門学校
横浜未来看護専門学校
横浜病院協会看護専門学校
聖マリアンナ医科大学看護専門学校
相模原看護専門学校
横須賀市立看護専門学校
湘南看護専門学校
おだわら看護専門学校
浦和学院専門学校
さいたま市立高等看護学院
埼玉医科大学附属総合医療センター看護専門学校
春日部市立看護専門学校
深谷大里看護専門学校
上尾市医師会上尾看護専門学校
戸田中央看護専門学校
北里大学看護専門学校
幸手看護専門学校(第一看護学科)
本庄児玉看護専門学校
山王看護専門学校
旭中央病院附属看護専門学校
慈恵柏看護専門学校
勤医会東葛看護専門学校 など


*「数学Ⅰ」+「数学A」
千葉労災看護専門学校・横浜労災看護専門学校
昭和大学医学部附属看護専門学校
東京警察病院看護専門学校
板橋中央看護専門学校
帝京高等看護学院
神奈川県立衛生看護専門学校
神奈川県立よこはま看護専門学校
神奈川県立平塚看護大学校
イムス横浜国際看護専門学校
藤沢市立看護専門学校
坂戸鶴ヶ島医師会立看護専門学校
千葉中央看護専門学校
千葉市青葉看護専門学校
船橋市立看護専門学校
君津中央病院附属看護学校
松戸市立総合医療センター附属看護専門学校
千葉県立野田看護専門学校
千葉県立鶴舞看護専門学校
二葉看護学院  など


「社会人入試」「一般入試」の詳しい内容については、ぜひ「入試の仕組み 大学編」「入試の仕組み 専門学校編」をご覧ください。
 → 入試の仕組み 大学編
 → 入試の仕組み 専門学校編


どの学校を受けるかを最終的に決めるのは、学校を実際に自分の目で見て確かめる夏以降になると思いますが、「どの教科の組合せで勉強するか」は、最初にはっきりさせる必要があります。そうしないと勉強の計画が立てられませんからね。受験しようかな……と思っている学校の入試科目などを調べてみましょう。ただし、受験校が全く決められないという場合は、オーソドックスな組み合わせで、数ⅠAと英語を軸に、国語や生物(生物基礎)を勉強するというのが無難です。



④勉強の方法を決める

教科を決めたら、具体的にその勉強をどうやって進めればよいのでしょうか。方法は色々と考えられますね。

・予備校や塾に通う。
・通信講座を利用する。
・参考書や問題集を購入して自習する。


それぞれにメリット、デメリットがあります。それらを考えてみましょう。

【予備校、塾、スクール】
[メリット]
・独学よりも理解しやすい。疑問点を先生に直接質問できる。数学の図形問題や英語などでは、独学よりも効果が上がりやすい。
・友達や一緒に勉強する仲間ができる。
・過去の受験の情報などの資料が比較的充実している。(専門予備校・学習塾の場合)
・自分がどこでミスをしているのか、先生が指摘してくれれば、勉強の効率が上がる。(個別指導塾の場合)

[デメリット]
・授業のレベルや先生の教え方が自分に合わない場合はあまり効果があがらない(先生やスクールとの相性問題)。
・夜間部の講座の場合や、先生が非常勤で他のスクールと掛け持ちしている場合、疑問点を先生に直接質問することが難しくなる。(メリットが生かせなくなる。)
・受講料が高い。
・時間の拘束がきつい(授業のある時間に仕事を休めるとは限らない)。


【通信講座】
[メリット]
・通学よりは費用が安く済む。
・自分のペースで時間をとって勉強を進めることができる。
・自分の考えと突き合わせながら取り組むことに意味のある科目(特に小論文・作文や国語の読解問題のような添削科目)では、予備校や学習塾に通うより、効果が上がりやすい。

[デメリット]
・仕事や家庭の関係で、勉強をさぼりがちになりやすい。勉強のペースを作るのが意外と大変。仕事・家庭との両立や、モチベーションの維持・向上が課題。


【インターネットのビデオ講座】
[メリット]
・業者次第だが、インターネットを使った大手業者のビデオ講座は、通常の通学・通信講座より費用が安く済む。
・授業が細かく分かれ、1つのビデオが数分で終わることが多いので、自分のペースで時間をとって勉強を進めやすい。
・先生の授業を聞けるので、昔ながらの通信や独学より理解度が上がりやすい。

[デメリット]
・つい勉強をさぼりがちになり、途中でやらなくなってしまう。勉強のペースを作るのが意外と大変。
・テキストを別途買い求めなければいけない場合がある。


【独学・自習】
「通信講座」のメリット・デメリットとほぼ同じですが、それに加えて、
[メリット]
・多くの参考書・問題集の中から、自分が気に入ったものを自由に選んで使うことができる。しかも費用的には非常に安くすむ。(国語、英語、数学の3教科で参考書と問題集をそろえても1万円程度で済む。)

[デメリット]
・自分のレベルやニーズに合わない参考書・問題集ではまったく効果があがらない。
・自分のレベルやニーズを客観的に判断することが難しい。


独学・自習で行く場合は、使う教材(参考書・問題集)の選び方が決定的に重要になります。
オススメ参考書(独習書)」のページもぜひ参考にしてください。


なお、以上の学習方法は併用することも可能でしょう。たとえば、

*得意な教科は独学・自習し、苦手教科だけ予備校・塾などのスクールを利用する。
*独学・自習をベースにするが、出来具合いを確認したり、モチベーションを高めたりするという目的で予備校・塾の短期講習や模擬試験などを部分的に利用する。

……など。実際、このようなかたちで複数の手段を併用して受験の準備を進めている人は、最近増えています。


人によって適切な勉強の進め方は異なります。誰にとってもベストというやり方は存在しません。自分にとってベストな学習方法を探してください。これまでの受験経験(勉強経験)、仕事や家庭など現在の生活との兼ね合い、図書館や予備校などの学習施設が徒歩・通勤通学圏内あるかどうかなど、さまざまな条件を冷静にふりかえったうえで、自分自身に合ったプランを考えてみてください。私たちも、みなさんそれぞれのニーズに応えられるサービスや情報の提供を行っていきます。また、わからないことや悩みなどがありましたら、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

――
この他に、3年間(4年間)の資金計画や家族内の問題、あるいは年齢の問題なども事前によく考えておくべきです。ぜひ、「お金(学費・生活費)の話」や「年齢制限の話」などの記事もご覧ください。
 → お金(学費・生活費)の話
 → 年齢制限の話




看護系入試マニュアル 【勉強の進め方編】

①学習レベルや教科ごとの特性を見極める

4年制の看護大学を目指している方は、一般の大学受験で推奨されている学習書・勉強法を十分に活用する姿勢でよいと思います。

一方、看護学校(3年制)を目指して勉強する場合は、大学入試とのレベルの違いを考えなくてはなりません。つまり、大学入試で「おすすめ」とされているメニューが、そのまま妥当するわけではないということです。専門学校での平均的な出題レベルを考えれば、どの教科も「基本重視」の姿勢でよいでしょう。(発展問題・応用問題まで完璧にマスターしきる必要はあまりありません。むしろ、基本~標準レベルの典型的な問題を正確にスピーディに解けるようにすべきです。)

また、准看学校(2年制)受験では、さらに事情が異なります。国語や英語、小論文(作文)の学習は、看護専門学校受験と同様のメニューでよいでしょう。しかし、数学については、基本的に「中学校の履修範囲」から出されると考えなくてはなりません。つまり、(大学入試ではなく)高校入試に対応した学習が必要となります。看護専門学校を目指す場合とは、学習すべき内容が違ってくるのです。

さらに観点は変わりますが、英語における単語・熟語、数学における計算力、国語における漢字などは、日常生活で学習から離れている社会人は、現役高校生のころから大幅に落ちています。英単語を覚えても次の日には忘れていて、又最初から…となることも珍しくありません。文章を書こうとして漢字が出てこないこともしょっちゅうです。基礎的な部分ほどくり返しの勉強が必要となります。


……以上のことを抑えた上で、とくに英語と数学に関して、「ゼロから勉強しなくてはならない」という自覚がある方は、とにかく早めに取りかかってください!

この2教科については、最低限の基礎が理解できて、勉強のてごたえを感じられるようになるまで(あるいは模試などを受けてまともに点数がとれるようになるまで)にかなり時間がかかります。

国語(現代文)・生物・小論文などの教科については、いつ勉強を開始したとしても、一定の成果は出せると思われますが、それでも早く始めるに越したことはありません。例えば小論文で、自分の思っていること・考えていることを相手に伝わるようなことばに直す練習は、意外と大変で時間がかかるものです。一夜漬けでできるようなものではありません。

看護系入試での各教科の出題傾向・勉強方法については「オススメ参考書(独習書)」も参考にしてください。
 → オススメ参考書(独習書)

②過去問を集める

看護専門学校(3年制)や准看護学校(2年制)の入試問題は、一般の大学入試などに比べても学校ごとの独自性・クセが非常に強いと言えます。したがって、各教科とも一通り系統的に学習したあと、秋以降には自分の志望校の過去問に積極的に目を通し、その出題傾向に合った準備を進めていくことが望ましいでしょう。

過去問題の入手方法は学校によって実にさまざまです。希望すれば願書とともに送付してくれる場合が多いのですが、その他、ウェブページ上に入試問題を公開している学校も最近は少しずつ増えてきています。(一方、それほど多くはないものの、過去問題を「非公開」としている学校もあります。特に、社会人入試や推薦入試の問題を非公開としているところは多いですね。)

系統的な学習を進めている段階ですぐに過去問題にあたる必要はありませんが、受験しそうな学校の過去問を入手できる機会があれば、どんどん集めて保管しておくことをおすすめします。入試が目前に迫ってから収集するのは非常に面倒ですし、人気のある学校の場合、配布用に準備していた部数を全てさばききって、配布自体が終了してしまうこともあります。学校説明会などのイベントで過去問が配られたり、販売していたりしたら、ぜひ入手しておきましょう。

一方、主要な看護大学(4年制)の一般入試問題・解説については、毎年、教学社の赤本シリーズで刊行されていますので、ぜひ「赤本ウェブサイト」などでチェックし、発売されたら購入するとよいでしょうね。ただし、聖路加国際大学・日本赤十字看護大学のように、赤本シリーズに収録されていないため大学から直接購入するしかないというケースもあります。また、一般入試の過去問題は比較的入手しやすいのですが、「社会人入試」「推薦入試」など特別枠の入試問題は非公開だったり、特定の場所(大学の入試課など)で閲覧のみできたり……というケースが多いので注意が必要です。


③大学志望者ならばセンター対策も!

私立大学(および短期大学)では、学校独自の入試の他に、大学入試センター試験(1月)の成績で合否を判断する「センター入試」枠を導入している大学が多数あります。国公立大学ではセンター試験は1次試験という位置づけですが、私立大学の場合、センター試験のみで合否を判定するところが多数あります(もちろん2次試験に個別の試験を課すところもあります)。センター試験を受験しておくと、いろいろな大学の併願が容易になるため、私立大学志望者であってもセンター試験を出願・受験しておくのが、いまではごくふつうになっています。ただし、センター試験の出願時期は毎年10月前半と非常に早いので、くれぐれも「出願し忘れ」がないよう、気をつけてください。
※2021年からは「大学入学共通テスト」が導入されます。

参考<センター試験「受験案内」の入手法>
社会人の方は、個人の責任で受験案内を手に入れ、出願手続きをする必要があります。受験案内の取寄せ方法は、
①9月以降、センター試験を実施する各大学に出かけて、実物をもらってくる。
②「全国学校案内資料管理事務センター」のサイトから請求。
③大きな郵便局に置いてある「受験案内請求申込書」で申し込む。
(②③なら8月1日から申込可能ですが、家に届くのは9月になってからです。また、②③は送料・手数料がかかりますから注意してください。)


~センター試験を利用して受験できる大学の例(東京近辺:2020年度)~
◎国際医療福祉大学 保健医療学部
◎西武文理大学 看護学部
◎大東文化大学 スポーツ・健康科学部看護学科
◎東都医療大学 ヒューマンケア学部
◎日本保健医療大学 保健医療学部
◎日本医療科学大学 保健医療学部
◎目白大学 看護学部看護学科
◎国際医療福祉大学 成田看護学部 ◎秀明大学 看護学部
◎淑徳大学 看護栄養学部
◎順天堂大学 医療看護学部
◎東京情報大学 看護学部
◎東都医療大学 幕張ヒューマンケア学部
◎東邦大学 健康科学部
◎了徳寺大学 健康科学部
◎共立女子大学 看護学部
◎杏林大学 保健学部看護学科
◎駒沢女子大学 看護学部
◎創価大学 看護学部(前期4科目)
◎帝京科学大学 医療科学部
◎帝京大学 医療技術学部
◎帝京平成大学 ヒューマンケア学部/健康医療スポーツ学部
◎東京医科大学 医学部看護学科
◎東京医療学院大学 保健医療学部
◎東京医療保健大学 医療保健学部/東が丘・立川看護学部
◎東京家政大学 健康科学部看護学科
◎東京工科大学 医療保健学部看護学科
◎日本赤十字看護大学 看護学部
◎武蔵野大学 看護学部
◎神奈川工科大学 看護学部
◎関東学院大学 看護学部(前期4教科4〜5科目型)
◎国際医療福祉大学 小田原保健医療学部
◎松蔭大学 看護学部
◎湘南医療大学 保健医療学部
◎昭和大学保健医療学部
◎東海大学 健康科学部看護学科(前期)
◎横浜創英大学 看護学部 ……など


センター試験を受けなくても、センター試験の過去問はマーク式・選択式入試問題対策として非常に有益です。しかも、たいへん安く入手できます(たとえば教学社の「センター赤本シリーズ」は、1教科約900円で約20年分の問題・解答解説がすべて収録されており、分厚さに比して驚くべき安さ)から、看護大学志望者には強くおすすめしたいですね。

*以上はあくまで看護大学(4年制)を一般入試で受験する方にむけたアドバイス。専門学校受験を目指している方は、センター試験を気にする必要はそれほどありません。特に、専門学校を第一志望とする方の場合、センター試験の受験には一定の意味はありますが、専門学校の受験のピーク(1月半ば)と、センター試験の日程が重なるため、物理的にセンター試験を受験できない場合があります。




看護系入試マニュアル 【学校選び・出願準備編】

①「一日看護体験」へ参加する

現在、病院で看護助手として勤務している方や、介護など隣接する職種で仕事をされている方は、すでに看護師の仕事内容は詳しくご存知でしょう。しかし、まったくの異業種・異分野から転身をはかろうと考えている方、現在学生で看護の仕事の実際についてなじみのない方には、看護師の仕事を間近に見たり、実際に体験したりする機会は非常に貴重です。「看護師の仕事を知った上で看護師を目指す」と言えるというのは、転職理由が単なるあこがれなどではなく、きちんとした考えに基づくものだということに、説得力をもたせます。

看護師の仕事を知る方法として、まず思い浮かぶのは、「一日看護体験」のようなイベントです。

「一日看護体験」は、病院を中心に、老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問看護ステーション、保健所など、看護師が働いている多くの機関が、それぞれにユニークなプログラムで実施しています。また、看護師を志す高校生を中心に、主婦、会社員、定年後の方など幅広く参加しています。こういったイベントに積極的に参加し、「看護の仕事」に対する具体的なイメージを作っておきましょう。

「一日看護体験」については、例年5~8月にかけてさまざまな医療機関で実施されています。実施施設、実施期実、定員(募集人数)、申込方法といった関連情報は、日本看護協会がとりまとめ、ホームページに掲載しています。具体的な対応は都道府県ごと・施設ごとに異なりますので、「日本看護協会」のサイトなどから確認し、適切にお申し込みされるとよいでしょう。
 → 日本看護協会 ふれあい看護体験

5~8月以外の時期にも、定期的に「一日看護体験」を実施してくれている病院・施設もあります。(東京都文京区の東京健生病院など。)いずれにせよ、秋以降は出願準備などで忙しくなってきますから、なるべく早めに(できれば夏までに)参加しておくとよいでしょう。


②学校見学会・オープンキャンパスに参加する

学校見学会(説明会)やオープンキャンパスへの参加は、非常に大切です。今後3~4年間、いろいろな意味で厳しい学生生活が続くことを考えると、学校選びにはじっくり時間を費やし、「ぜひここで勉強したい!」と思える学校・自分と相性のよさそうな学校を探していくべきです。また、見学会などにきちんと参加していれば、面接試験で「なぜ本校を受けたのか」と問われたときにも圧倒的に話をしやすくなります。

最初の学校見学会・オープンキャパスが行われるのは、3月下旬(春分の日)の頃です。大学を中心に新高校3年生向けの春休みのオープンキャンパスが全国各地で開催されます。

その次に学校見学会・オープンキャンパスが集中するのは6~8月頃。特に夏休みに入った7月下旬〜8月上旬にはオープンキャンパスが集中して行われます。専門学校ではこの時期に行うところが一番多いですね。この時期を逃すと学校を直接訪問するチャンスが減ってしまうので、ぜひ夏のうちにスケジュールを空け、気になる学校をいろいろ見て回っておきましょう。なお、予約が必要な学校も多いので注意して下さい。人気校の場合、オープンキャンパスの1か月前の時点で予約がいっぱいになるということも珍しくありません。

また、オープンキャンパスとは別に、個別で校内を見学できたり、学校の話を聞くことができる場合があります。オープンキャンパスの申し込みを忘れてしまっていたり、予約が取れなかったりした場合でもあきらめず、学校に問い合わせてみましょう。

その他、学校に行くチャンスとしては、11月頃(文化の日前後)に多い文化祭があります。文化祭の中でミニ説明会や相談会を実施していることもよくあります。こういったイベントもチェックしておきたいですね。


③「志望動機」「自己PR」を早めに文章化しておく

「志望動機」の文章化は、できれば夏のあいだにすませておきたいところです。そのためにも、ゴールデンウィーク明けのころから、すこしずつ「志望理由」について考えていきたいものです。ありきたりな表現でなく、自分のことばで述べられるようには時間がかかるからです。

看護医療系の入試では、「人物性」がたいへん重視されます。看護医療の仕事は人と接する仕事なので、「頭はよいけど人としてちょっと……」という方はやはりまずいわけです。(もちろん、膨大な医学知識を吸収する最低限度の学力があるのが前提ですよ。念のため。)

「人物」を評価する材料となるのは、出願書類での「志望動機(理由)欄」や、面接での話しぶり……などです。出願書類に記入する内容・面接できちんと訴えたい内容は、本来、試験が迫った時期にあわてて準備するようなものではないのです。日頃から自分自身との対話を積み重ねつつ、じっくりと時間をかけて練り上げていきましょう。よくあることばを適当につぎはぎしただけの「付け焼刃」の志望動機は、簡単に見破られてしまいます。例えば、慌てて準備したものだと、それが本当に自分のことばになっていないため、どうしても文章を丸暗記して面接試験に臨むことになります。想定された質問には立て板に水で答えられても、同じことを異なる角度から突っ込まれた時にしどろもどろになってしまいがちです。借り物の志望動機だと、自分の経験による裏付けがないため、抽象的で具体性に欠けやすい。そこをつつかれるとボロが出る、というわけです。

まず、「看護師をめざす理由」と「自己PR(社会人体験や学生生活の中で学んだこと、それを今後にどう生かすか)」の二項目から文章化してみることをおすすめします。この二つは、自分のことを相手に説明する際の基本の部分となり、あとあと応用がきくからです。


出願書類の書式は学校によって実にさまざまです。「志望動機」の欄が広い学校もあれば、狭い学校もあります。ですから、「じっくり長く述べたバージョン」と「なるべく短くまとめたバージョン」の2種類作っておくと、あとあと楽かもしれません。

スコレー・アスコルーでは、「願書・自己推薦書アドバイスサービス」を行なっています。志望動機や自己PRをまとめる際にご利用ください。また、自己分析などのアドバイスも行っていますので、お気軽にご相談ください。


④受験プランは「小出し」にせず、まとめて立てる

看護系入試の現状を考えると、ある程度多めに併願するつもりでいるのがふつうですね。社会人のみなさんですと、秋から社会人入試を受け始め、年明けの一般入試までいくつもの学校を受け続けるというケースも十分に考えられます。人によっては、受験シーズンが半年に及ぶこともありえるわけです。

まず1校受験し、結果が出なかったら次の受験先を探すようにしよう。そうお考えの方もいるかもしれません。しかし、そういう受け方だと、各種書類の取寄せ・書類への記入など出願に要する作業をその都度はじめから繰り返すことになり、非常に面倒です。また、「落ちてから次を考える」のでは、モチベーションを維持するのもかなり難しい。どんなにタフな人でも試験に落ちたら凹みます。落ちる度に凹んで、立ち直って…の繰り返しでは、能率も一向に上がりません。人によっては、凹んでから立ち直るのに一月以上かかる場合があります。実際、社会人入試の結果で凹み、立ち直った頃には一般入試で全く準備ができておらず玉砕するというケースは、毎年のように耳にします。

望ましいのは、9月に入ったあたりの時点で、社会人入試も一般入試も含め、数ヶ月にわたる受験計画(スケジュール)をまとめて立ててしまうことです。(なぜ9月かというと、入試日程などの情報が出回り始めるのが夏休みのすこし前。学校説明会は夏休みなどに多いですから、そういった情報をもとに受験する学校をある程度絞り込むことができるようになるのは、夏休み以降だからです。)ノートを使って、出願日、受験日、入試科目などをカレンダーの表に書き込んでしまいましょう。

受験計画(スケジュール)を立てたら、あとはその計画通りに着々と行動していくのです。早目に合格・入学が確定したら、それ以降のスケジュールはキャンセルすればよいのです。そう考えてください。

受験計画(スケジュール)を組み立てやすくするためにも、受験しそうな学校の願書は早めに取寄せ、保管しておくことをおすすめしたいですね。実際の出願にはけっこうなお金がかかりますが、願書を集めるだけならたいした負担にもなりません。無料の学校も多いし、有料でも1000円くらいです。1000円の募集要項を5校分集めても、5000円で済みます。金額的にそれほど大きな負担ではありませんし、「すぐに次の学校を出願できる態勢」をとっておけば気持ちにも余裕が生まれます。募集要項と一緒に過去問を取り寄せできる学校が大半ですから、過去問収集も一緒に行えます。

受験プランをまとめて立てるには、そのときまでに学校選びをある程度済ませておくことが必要となります。ですから、上に書いたような、学校探し(学校見学)や志望動機の文章化などは、早め早めに取り組んだほうがよいのです。


―――

いかがでしょうか。看護学校・看護大学の受験では、看護体験への参加や志望動機の掘り下げなどの看護師への意欲を高めてゆく作業と、学校を調べたりオープンキャンパスに参加したりして学校選びを行う作業を、学科の勉強と並行して行う必要があります。説明会や看護体験などのイベントが開催される時期は年間を通してだいたい決まっていますから、その時期・タイミングに忘れずやっておかないと、後からそれをリカバリーするのはたいへんです。

このように、学科の勉強だけでなく「その時期・タイミングに忘れずやっておかなくてはならない」作業があれこれ多いのが看護医療系の受験です。さらに、仕事や家事とバランスをとりながら受験準備を進めていかなければいけません。大学生のみなさんなら、就職活動と受験準備を並行してやっていかなければなりません。それらは決して簡単なことではないでしょう。

自分は本当に看護師になりたいのか? その目標にむかってさまざまな苦難を乗り越えていく強い覚悟があるか? 一歩踏み出す前に、まずはその点をしっかり考えてみてください。その覚悟を確信できれば、それは、きっとあなたを前進させる原動力になるはずです。



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